鳥羽踊り音頭
竹立庵 作詞
T 縣の里に 今も尚
伝えて残る 語り草
後鳥羽の院の 物語り
頃は鎌倉 将軍家
天下の諸将 従えて
空とぶ鳥も 羽しづめ
世は泰平と 思いしに
早くも兆す 世の乱れ
U 四民安穏 はからんと
後鳥羽の院の 御旗あげ
時は承久 三の年
倒幕追討 進めんと
五月半ばの 兵揃へ
幕府執権 義時は
時こそ来たれ 我が望み
天下の覇者は 北條と
V 集めし兵 二十万
院宣奉ず 軍勢は
僅かその数 三万余
尾張宇治瀬田 守れども
みいくさ空し 敗れたり
これ承久の 変とかや
さても北條 義時は
心おごりて 上皇を
おきの島なる 岩かげの
荒磯の里の み住居に
遷しまつるぞ 非道なる
W 佛の道に 朝夕を
仕へまつれる 上皇は
昨日に変る 今日の身と
隠岐路の旅に 出で給う
院に従う 者とては
西の御方 伊賀局
和気の長成 藤原の
能茂などの 忠臣と
つきぬ恨みに かきくもる
涙の袖を しぼりつつ
都をあとに 露しげき
X 摂津播磨の 野をすぎて
美作越ゆれば 伯耆路や
いばらの道を ふみ分けて
北風寒き 出雲路の
大浦の浜に 着きにけり
御船に召され 寄す波に
心も千々に ゆられつつ
人の世隔つ おきの島
刈田の里の 片ほとり
いぶせき御所に つき給う
あらき波風 心して
Y 吹けと歌ひし 上皇の
み歌も悲し 島守と
民のわら屋に 軒ならべ
配所の月に なく虫と
年月すごし 給ひしが
文暦元年 八月ごろ
上皇ひそかに 隠岐島を
出でまし給ひ 若き日の
修繕の霊地 備中は
縣の里に みゆきあり
ここにとどまり み佛を
Z まつりて厚く 御信仰
月雪花と すぎ行きて
星は移れど 上皇の
御わびしさは ますばかり
心にいたつき 重なりて
遂に身かくし 給ひけり
御いたわしの 上皇様の
みたまをまつる 鳥羽踊り
踊るみささぎ 広前に
今にも残る 紫雲山
金剛福寺の ゆかり名は
[ 上皇様の 法号と
語り伝えて 七百年
山門高き 老い松に
昔のことを たずねんと
仰げば真如の 月は澄む
仰げば真如の 月は澄む


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