式神召還初体験
 白い浄衣(白無地の狩衣)でただ独り。
薄暗くひんやりとした部屋の中で祭文を繰り返す。
 蝋燭の炎だけが祝詞文を読むのに頼りだ。
朗々と唱える祭文および呪文・・・
 我が家に伝わる祭壇と遁甲陣の配置。蝋燭のともし火。
 高まる内なる霊力を感じ呪文を発動する。
「我の召還に応じよ白虎」
最後に気合をこめて呪文を唱える。
その刹那。
眼前の遁甲魔方陣から浮き出てくる見えない塊。
何も感じなかった空間にもはやそこには数瞬前には無かった威圧感が存在した。
見えない威圧感は確かにそこに在り、時間と共にさらに空間を圧迫してくる。しだいにそれは大きくなる。
もうしばらくしたら我の制御霊力を超えることが本能でわかってしまう。
どうすればいい?
焦りばかりが増してくるが、増してくる焦りとは逆に制御霊力限界値、刻一刻と削り取られていく。
あせりの中、祖父から伝授のあった気押しの法で威圧感を押し戻そうと試みた。
たしかに押し戻してみた。が、わずかに威圧感を押し戻しただけでじわじわと圧倒してくる波動にかわりはない。
「あっ」そう思った瞬間、我が制御霊力を超え召還した白虎の威圧感は霧散したかのように消え去った。
 我は震える体をかき抱いた。
 式神に命令を与える隙が無かった。まだ自分の霊力不足を痛感した。
 式神より術者のほうが霊力が高くなければ術者の命令を式神に聞かせることはできない。下手をすると式神に憑依されることもある。
重々気を付けて精進しなさいと祖父は言ったのをそのとき思い出した。
もう少しで冬という季節。式神召還実験が失敗に終わった。
十九歳をむかえ冬の訪れを感じる深夜の出来事であった。
 つぎの成功へとさらに闘志を秘めつつ・・・。

 
 
 
 

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